Forest of Stories

Even one leaf is a part of THE FOREST.

Leaf 11

その涙に、僕はどんな言葉を掛けるべきなのかわからなかった。何も言わずに黙々とピザを頬張るさとみは、こちらに気を配る余裕がないという様子である。時折浮かぶ涙が、店内の照明を静かに反射していた。

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Leaf 9

話ができる程度の距離まで近づくと、彼女たちからは少し焦げたような匂いの中に汗くささが漂っていた。男性のそれとは異なるとはいえ、やはり嗅覚を強く刺激する。洗い立てのセーターが後ろめたく思えて、殊更にコートの襟を立てて話しかけた。

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Leaf 8

針のような北風が、微動だにしない秋田犬の頬を刺す。その静けさの隣には声があり、歌があり、音がある。真っ白に覆われた冬空の下、渋谷の街は覚めない夢のように心地よい騒がしさに包まれていた。

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Tree 1について

筆者として皆様にお会いするのは初めてです。はじめまして。

この記事の本題に入る前に、このブログについて簡単に説明させて頂きます。

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Leaf 7

車内に空いている席を見つけた早瀬は、ちょこちょこと駆け寄ると腰掛けた。彼女は正面に立った竹内をまぶしそうに見上げた後で、そっと目を瞑った。呟くように「せっかくリラックスしていたのに、余計なことを思い出しちゃった」と漏らした。尋ねると、両親の姿がちらついたと笑う。酔いのせいか疲労のせいか、と首を横に振る彼女の瞼には疲労の色が浮かんでいた。竹内はその小さな顔をしばらく見つめた後で、視線を吊り広告に移した。内容はあまり頭に入らなかった。

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Leaf 6

 「それから、一つ聞きたいことがあるんです。なぜ、さっき店を出たあと、倉下にあんな話をしていたんですか。ホテルに行こうかな、みたいな感じで」

「ああいう話をしないと、倉下さんにいじめられるんです」

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