Forest of Stories

Even one leaf is a part of THE FOREST.

Tree 2

Leaf 11

その涙に、僕はどんな言葉を掛けるべきなのかわからなかった。何も言わずに黙々とピザを頬張るさとみは、こちらに気を配る余裕がないという様子である。時折浮かぶ涙が、店内の照明を静かに反射していた。

Leaf 10

「この一週間のことを話してもいいですか」

Leaf 9

話ができる程度の距離まで近づくと、彼女たちからは少し焦げたような匂いの中に汗くささが漂っていた。男性のそれとは異なるとはいえ、やはり嗅覚を強く刺激する。洗い立てのセーターが後ろめたく思えて、殊更にコートの襟を立てて話しかけた。

Leaf 8

針のような北風が、微動だにしない秋田犬の頬を刺す。その静けさの隣には声があり、歌があり、音がある。真っ白に覆われた冬空の下、渋谷の街は覚めない夢のように心地よい騒がしさに包まれていた。