Forest of Stories

Even one leaf is a part of THE FOREST.

Tree 1

Tree 1について

筆者として皆様にお会いするのは初めてです。はじめまして。 この記事の本題に入る前に、このブログについて簡単に説明させて頂きます。

Leaf 7

車内に空いている席を見つけた早瀬は、ちょこちょこと駆け寄ると腰掛けた。彼女は正面に立った竹内をまぶしそうに見上げた後で、そっと目を瞑った。呟くように「せっかくリラックスしていたのに、余計なことを思い出しちゃった」と漏らした。尋ねると、両親…

Leaf 6

「それから、一つ聞きたいことがあるんです。なぜ、さっき店を出たあと、倉下にあんな話をしていたんですか。ホテルに行こうかな、みたいな感じで」 「ああいう話をしないと、倉下さんにいじめられるんです」

Leaf 5

竹内は、倉下と早瀬の関係性を密かに疑った。社内でどれほど仲が良いのか知る由もないが、軽くそのような話ができるのは「適切な先輩・後輩の関係」からはどこかずれている気がした。一階に降りた後に早瀬と二人きりで取り残された竹内は、彼女にどのように…

Leaf 4

倉下は「あれがさとみちゃんな」と耳打ちすると、「お待たせ―」と調子よく挨拶をした。これは大学時代から変わらない。彼にとって目の前の人の性別など無関係である。男子校出身の竹内には、これが共学校の実力かとまさに驚愕している部分だが、以前から倉下…

Leaf 3

やがて電車が隅田川に差し掛かったところで、倉下は竹内に微笑みかけてきた。 「緊張してる?」 「そりゃ女の子と会うんだから、まあ多少は」 「そろそろ慣れた方がいいぞ」

Leaf 2

「竹内、最近浮いた話とかないの」 思えば倉下のこの言葉からすべてが始まったのだといっていいかもしれない。大学の部活動で知り合った彼とは、互いに就職してから3年が経った現在も交流を持っている。最近では結婚を意識する年齢になったこともあって、顔…

Leaf 1

地下鉄のプラットフォームに下る階段に差し掛かった辺りで、スイングトップの内ポケットの中でスマートフォンが電話の着信を告げた。少しの緊張を感じながら画面を見ると、「倉下裕介」の名前が表示されていた。 「――なんだ、倉下か」 「おっ、張り切ってる…