Forest of Stories

Even one leaf is a part of THE FOREST.

Leaf 5

竹内は、倉下と早瀬の関係性を密かに疑った。社内でどれほど仲が良いのか知る由もないが、軽くそのような話ができるのは「適切な先輩・後輩の関係」からはどこかずれている気がした。一階に降りた後に早瀬と二人きりで取り残された竹内は、彼女にどのように切り出し、どのように期待を裏切るかを思案した。

「早瀬さん、あの――」

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Leaf 4

倉下は「あれがさとみちゃんな」と耳打ちすると、「お待たせ―」と調子よく挨拶をした。これは大学時代から変わらない。彼にとって目の前の人の性別など無関係である。男子校出身の竹内には、これが共学校の実力かとまさに驚愕している部分だが、以前から倉下は「単なる性格の違い」と受け流している。竹内は店の前で会話が止まらない二人の様子を見て、ついていけないとばかりに首を右に少しかしげた。

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Leaf 3

やがて電車が隅田川に差し掛かったところで、倉下は竹内に微笑みかけてきた。

「緊張してる?」

「そりゃ女の子と会うんだから、まあ多少は」

「そろそろ慣れた方がいいぞ」

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Leaf 2

「竹内、最近浮いた話とかないの」

思えば倉下のこの言葉からすべてが始まったのだといっていいかもしれない。大学の部活動で知り合った彼とは、互いに就職してから3年が経った現在も交流を持っている。最近では結婚を意識する年齢になったこともあって、顔を合わせるといえば話題もそちらに傾きがちだった。

「申し訳ないけど相変わらず女の子の影はないかな。倉下は彼女とうまくやってるんでしょ? いいよな、余裕で」

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Leaf 1

地下鉄のプラットフォームに下る階段に差し掛かった辺りで、スイングトップの内ポケットの中でスマートフォンが電話の着信を告げた。少しの緊張を感じながら画面を見ると、「倉下裕介」の名前が表示されていた。

「――なんだ、倉下か」

「おっ、張り切ってるじゃん。『健闘を祈る』って言おうと思って電話したけど、言うまでもなさそうだな」

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